絵本といっしょに ~ちょびっとクラブ~

絵本をこよなく愛するメンバーによる、良質な絵本を楽しむクラブです。メンバーのひとり、Kの日々思うこと。

モラーリッシェ・ファンタジー

「モラーリッシェ・ファンタジー」という言葉があります。 日本語に訳すと「道徳的想像力」。 私のイチオシの作家、M・エンデはこのモラーリッシェ・ファンタジーについていくつか言及しています。 エンデの解釈に従い定義するなら「直感に根差して、ある状況に直…

春、再び…

新学期です。 久しぶりにブログを書いてみようかと思いました。 そして、驚きました。 前回の更新からちょうど1年ほども経過している上、当時と状況がほとんど変わらないことに。 (※さらに驚いたことに、この文章を書き始めてから、一月ほど経過しています…

「新しいサロン方式」

4月になりました。 ちょびっとクラブサロンは、昨年の3月に活動休止して以来、まだ再開の目処が立っておりません。 あの頃、多くの未就園児向けサロンやサークルが休会を余儀なくされていたと思います。 その後、学校の再開と同時に、少しずつ開催されると…

絵本を読めない大人たち

以前、ちょびっとクラブ参加者の方にお配りした通信で取り上げたテーマですが、今、また改めてこのことについて考えてみます。 出版物に占める絵本の人気の高さに比例して、様々な人が絵本を読み、その感想を目にする機会も多くなっています。 ロングセラー…

読みかたりとポテサラ

しばらく前に「ポテサラおじさん」というのが話題になりましたね。 自分が今まで関わったことがない事柄について、たいしたことではないと決めつけ、それをそのまま不躾に相手に伝えてしまう人というのがなぜかいます。(ところで、「ポテサラおじさん」について…

子どもにメッセージを送る人へ

最近、子ども向けの媒体で、少し問題のある文章が発表されてしまい、あちこちから非難されるという事態が起こりました。 そのメディアは、すぐに、筆者からの真摯なお詫びのメッセージを掲載し、良い感じに収まったのですが、子どもに向けて何らかのメッセー…

どうながダック

どうながダック 永田 力 作・絵 福音館書店 青年期に出会った絵本です。 書店で見かけ、すっかり気に入ってしまいました。(画像は月刊誌のものですが、書店にあったのはハードカバー版で、そちらを購入しました。) 福音館書店の「こどものとも年中向き」シ…

読みかたりの動画配信について

ここ3ヶ月ほどちょびっとクラブのおはなし会は休止していますが、その間、「オンラインちょびっとクラブ」をやろうとか、読みかたりの動画配信をやろうという意見はなく、メンバー誰もやるつもりはありません。 代わりに、今までのように各回のテーマに合わ…

絵本の対象年齢

3月から、ちょびっとクラブの活動が休止しています。 そのため、ちょびっとクラブでは読まないような種類の絵本まで幅広く読んでいます。 そのような中、気になることがありました。 それは絵本の対象年齢についてです。 多くの絵本には、対象年齢の目安が…

パンやのくまさん

フィービとセルビ・ウォージントン 作・絵 まさき るりこ 訳 福音館書店 パン屋さんはお好きですか? 近頃は、都会でも田舎でもあちこちに個性的なパン屋さんがありますよね。そして、同じ種類のパンでもお店それぞれに特徴があり、食べ比べするのも楽しいも…

私をかたちづくるもの

最近聞いてとても驚いた話があります。 夫が勝手にテレビのチャンネルを変えて困る、私が観ているのに…というものです。付け加えますが、それに対して妻は「今、私が観てるのだけど」ということを夫に伝えたことが一度もないようなのです。 なんで言わないの…

ステイホームのスローガン

夫がユーチューブで熱心に観ているものがあります。ステイホームを訴える、有名な楽曲の替え歌です。特にお気に入りの曲は何度も聞いて、感傷に浸っています。 残念ながら、私は彼の気持ちに寄り添い、感動を分かち合うことができません。(曲と映像自体はク…

はじまりの日

『はじまりの日』 ボブ・ディラン 作、ポール・ロジャース 絵、アーサー・ビナード 訳 岩崎書店 今日は5月のはじまりの日ですね。 大好きな一冊をご紹介します。 これは、ノーベル賞を受賞したミュージシャン、ボブ・ディランの名曲『Forever Young』の歌詞…

『たのしいぎろん』(3)

議論の話、思いの外長くなりつつあります。 (1)では議論ができない人がいるという話を、(2)ではその特徴を整理してみました。 今回は、それをさらに詳しく分析して、議論ができる人になるためにはどうすれば良いかを考えてみたいと思います。 ここからは…

『たのしいぎろん』(2)

前回は、議論が成立しない状態についての話をしました。今回は、なぜそのようなことが起こるのかということについて考えてみます。 議論にならない態度として挙げた2つをもう一度確認します。 ①「勝つ」ことを目的とする。自分の意見を通すために、威圧的な…

『たのしいぎろん』(1)

「議論」と聞いて、どんなイメージが湧くでしょうか。なぜわざわざそのような変な質問をするのかというと、この言葉の定義は、案外、人によって大きく違うのではないかと、最近考えているからです。 「異なる意見が存在した時、それらを様々な立場から論じて…

「あの人たちだけずるい」

子どもたちが小さい頃、よく企業の舞台イベントに申し込んで観に行っていました。 とある企業のイベントは、毎年夏に決まったホールで行われていたのですが、そこのホールの管理スタッフの中に、一風変わった人がいました。 彼は、開場時刻前に観客がホール…

ゲームの世界(2)

前回は、子どもたちはなぜゲームをするのか、大人たちはなぜ子どもたちに長時間ゲームをさせたくないのかということについて書きました。 そして、最後に、ゲームを必要とする子どもたちがいるのではないかというところまでお話ししました。今回はその続きで…

ゲームの世界(1)

いわゆるゲーム条例が話題になっています。 私自身は特にゲームをする習慣はありませんが、我が家の子どもたちはゲームが好きです。親がやらないので、ウチの中に色々な種類のゲーム機があり、日常的に使っているという状態ではありませんが。(大学生の娘は…

学びのツールとしての絵本

今回は、日頃私が言っていることと矛盾するのでは?という絵本の使い方についてのお話です。 大学が閉鎖され、ウチに閉じ籠ってパソコンの画面に向かってばかりの娘。 大学の授業が始まる前から、趣味で世界中の色々な子ども向けの学習サイトを探し出しては…

分からなくても分かっている

前回、ファンタジーの持つ力について触れ、『はてしない物語』という本について少し紹介しました。 その時に書いた通り、現在進行形で毎晩、少しずつ楽しんでいます。 過去に読んだことがあるのに、実のところ、ある場面は概要だけ覚えていて、またあるエピ…

ファンタジーの力

昨日、国内の7都府県に緊急事態が宣言されました。 新年度の開始や家族の状況、思い通りにいかない諸々の事情が重なって、閉塞感を感じている方も多いと思います。 普段は呑気なほど楽観的に自分の力を信じていたとしても、この世界で自分自身がやれること…

あるきだした小さな木

『あるきだした小さな木』 テルマ・ボルクマン・ドラベス 作、 シルビー・セリグ 絵、花輪莞爾 訳 偕成社 あまり外にでない日が続いています。 こう外へ出ないと、だんだん出歩くのが億劫になってきます。おまけに近頃天気も良くない。このまま根っこが生え…

理解できなかった話

娘としゃべっている時にふと、子どもの頃に見たドラマを思い出しました。 当時の私と同じ、食べ物の好き嫌いの激しい女の子のエピソード。女の子はある時、戦時中のお話を聞き、当時は十分な食料がなかったことを知ります。 女の子は、「昔は食べたくても食べ…

色彩の効果と待ちわびる気持ちと

『はなを くんくん』 ルース・クラウス 文、マーク・シーモント 絵、木島 始 訳 福音館書店 春の訪れを感じる頃に必ず思い出す絵本です。 モノクロで丁寧に描かれた森の動物たち。冬ごもりから目覚め、彼らはあるひとつの方向に向かって一斉に駆け出します。…

読みかたりは誰にでもできるか?

近ごろは、日本全国、あらゆる小・中学校、幼稚園等で、保護者や地域の有志による読みかたり活動が盛んです。 読みかたりをする人たちは当然、絵本が好きで、子どもたちのことも好きなので、子どもたちに絵本の楽しさ、読書の喜びを進んで伝えたい人たちでし…

昔話を語る

かつて、子どもたちは、絵本を読む代わりに、たくさんのおはなしを聞いて育ちました。世界中の子どもたちが、自分の家族やコミュニティの中で年長者が語るおはなしに耳を傾けたのです。 それらのいくつかは「昔話」として私たちに残されています。 長い年月…

父さんがかえる日まで

『父さんがかえる日まで』 モーリス・センダック 作 アーサー・ビナード 訳 偕成社 1983年に日本に紹介された『まどのそとのそのまたむこう』(脇 明子 訳、福音館書店。原題はOUTSIDE OVER THERE)の新訳です。 『かいじゅうたちのいるところ』(1963年)『…

科学絵本の「構成力」

私は小学校、中学校へも読みかたりに行っています。 最近、小学校の高学年へは、好んで科学絵本(社会科学も含みます)を持っていきます。 先日もある科学絵本を持っていったのですが、その時、あることに気付き、驚きました。 すぐれた科学絵本は、ある分野…

春の七草

「せり なずな ごぎょう はこべら ほとけのざ すずな すずしろ これぞ七草」 小学校の低学年の頃、この唱え方を知って春の七草を覚えました。(秋の七草の方はなかなか覚えられなかったです…)この知識も絵本から。 七草粥が食べたくて…母は毎年作ってくれて…