絵本といっしょに ~ちょびっとクラブ~

絵本をこよなく愛するメンバーによる、良質な絵本を楽しむクラブです。メンバーのひとり、Kの日々思うこと。

絵本の対象年齢

3月から、ちょびっとクラブの活動が休止しています。

そのため、ちょびっとクラブでは読まないような種類の絵本まで幅広く読んでいます。

そのような中、気になることがありました。

それは絵本の対象年齢についてです。

 

多くの絵本には、対象年齢の目安が載っていることにお気付きでしょうか。

一口に絵本と言っても、さまざまなジャンルがあります。また、子どもは大人と違って、心身共に急激に成長していく途上にあります。

そのため、その時期にふさわしい絵本というものがあるのです。

例えば、いわゆる赤ちゃん絵本と呼ばれるジャンルのものを思い浮かべてください。

ストーリーらしきものよりも、ことばの響きや絵の分かりやすさといったものに重点が置かれていると思います。

これらの本は、0歳の赤ちゃんから楽しめます。

しかし、登場人物やストーリー展開がしっかりとしている絵本を赤ちゃんに見せたらどのように反応するでしょうか。

おそらく、細かい絵を見づらいと感じたり、複雑なストーリーを追えずに何が面白いのか分からなかったりするのではないでしょうか。それらの本には良く見ると、「3歳から」とか「5歳から」といったような文字が裏表紙についていることがあります。

これがその絵本の対象年齢なのです。

 

もちろん個人差というものがありますから、対象年齢というものはあくまでも目安です。

「5歳から」と書かれている本を3歳でも楽しめる子もいるかもしれません。

それはその子の読書歴や興味関心を見極めて、勧めてみれば良いのです。

日頃絵本を読みつけている大人は、対象年齢を確認しなくても、そのあたりの塩梅が分かっているので、大きな間違いは犯さないものです。私も今まであまり気にしたことがありませんでした。

 

ところが、最近、絵本を選ぶ際に、この対象年齢というものを意識した方が良いのではないかと感じています。

というのも、年齢と選書のミスマッチという問題があちこちで生じていることに気付いたからです。

しかも、読者の側のミスだけではなく、そもそも出版社が付けた対象年齢の目安に首を傾げざるを得ない場合もあり、なかなか複雑な問題です。

混乱を避けるために、とりあえずは出版社の対象年齢が適切な場合に限ってお話しします。

 

「ロングセラーだから」「評判が良いから」といった理由で、幼児向けのストーリー絵本の傑作を赤ちゃんに読んで聞かせて、反応がイマイチだった、期待外れだった、評判より良くないという方がいるようです。

はやる気持ちは分かりますが、子どもがもう少し大きくなるまで待ってくださいと言いたくなります。

このような人はまあ、少数派のようですが、子どもが少し大きくなると、もう少し多くの方が、ずいぶんと子どもに背伸びをさせてしまうことがあるようです。

 

一般的に、大多数の絵本は、6歳頃つまり就学前までの読者を想定し、その世代までの発達段階や興味関心を考慮して作られています。

ところが、私も含め、大人の愛読者も多いのが現状です。

そのためでしょうか、世の中には対象年齢「中学生以上」「一般向け」という絵本も出版されています。

しかし、「絵本は子どものもの」という先入観があるためか、そのような「R12」(映画のレイティングのPG12ではなく!)「R18」的な絵本に注意を払う人は少ない気がします。

書籍にはごくごく一部を除いて、年齢制限という概念がそもそもありませんから無理もないことかもしれません。

 

このような「子ども向けではない」絵本にはどのような特徴があるでしょうか。

お察しの通り、だいたい次のような特徴を1つ以上備えています。

・残酷な表現が含まれる。

・性的な表現が含まれる。

・比喩的な心理描写を具象化しており、しかもそれがホラー的要素を含むなど、幼児期の子どもが読むのに相応しくない。

 

この中で一番注意が必要なのは、2番目の要素が入った絵本でしょうか。

なぜなら、残酷な表現が含まれる絵本や、ホラー的な絵本は、だいたい表紙を見ただけで「お子様お断り」的な雰囲気を醸しています。

ところが、性的な表現が含まれる絵本は、子ども向けの絵本と同じような表紙のことがあるのです。

このような絵本のうちのある一冊が、その性的なごく一部のシーンを除くと、小学生位の子どもでも楽しめる要素があり、そこそこ有名で、多くの小学生に読まれているようです。

そもそも、性的なシーンがあるということは、全体的な内容も大人の視点から描かれていて、子どもが読んでも表面的なことをさらうだけですから、わざわざ読まなくてもよいものです。

しかも、それをあまり問題だと思っていない大人が多いことが気になります。

せっかく出版社が対象年齢を示しているのに、「絵本は子どもが読めるもの」という先入観があるのでしょうね。

 

書物には、基本的には年齢制限がなく、その世代毎に違う味わいがあるものだと思っています。

私も子どもの頃からつい最近まで、出版社の提示する対象年齢について気にしたことなとありませんでした。

しかし、子どもは発達の途上にいます。

本を子どもが自ら手に取るのではなく、大人から手渡す場合には、対象年齢についてちょっと立ち止まって考えてから、勧めたいと思います。