クリスマスまであと9日
『クリスマスまであと9日~セシのポサダの日~』
マリー・ホール・エッツ&
アウロラ・ラバスティダ 作
たなべ いすず 訳、冨山房
クリスマスまであと9日ですね。
この魅力的な絵本のタイトルは、ポサダというクリスマスの伝統行事のひとつから採られています。
ポサダとは、メキシコでクリスマスの前の9日間に行われるお祭りです。表紙にあるように、マリアとヨセフの人形を先頭に、キャンドルを持った子どもたちが行列を作り、家々を回るそうです。そして、最後に受け入れてくれた家でパーティーをします。
主人公セシは小さな女の子。ある年のクリスマスにポサダのパーティーのホスト役を任されます。
そこに至るまでの様子が描かれているわけですが、どの要素を取っても見事な絵本です。
そもそも日本にいてメキシコのクリスマスの様子を知る機会はあまりないかと思いますが、控え目な色使いと柔らかくも比較的写実的な絵が、分かりやすくそれを伝えています。
少し古い感じがするのは、この絵本の舞台が1950年代だから。そういう意味では、当時のメキシコの様子を窺い知ることもできると言えるかもしれません。
文章でも、メキシコのクリスマスを知らない読者にも分かるように、ポサダの様子が丁寧に書かれています。
メキシコのお祝い事につきもののピニャータも、市場に売られているところから見せてくれます。
普段なかなか知る機会のないメキシコでのクリスマスの祝い方が良く分かるというだけでも、この絵本の価値は高いのですが、それだけではありません。
何と言っても、主人公セシの心の動き、成長の様子が実に丁寧に描かれているところが、この絵本の最大の魅力だと思います。
そのセシを傍で見守り、成長の手助けをする人形のガビナの存在が素敵です。
クリスマスが近いこの時期、ぜひ手にとってみてください。